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一寸坊の墓

 

一寸坊の墓

 

菩提の宝積寺には小松ヶ池の大蛇と村の娘との間に生まれた子だといわれる「一寸坊の墓」がある。地元には、こんな話が伝わっている。

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菩提に住む娘のところへ毎晩通ってくる若者がいた。心配した母親はどこの誰とも分からないこの男の正体を突き止めるため、娘苧環おだまきの糸を通した針を男の裾につけさせた。

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その糸の行方をたどってみると、糸は小松ヶ池の中へ入っており、男は、小松ヶ池の大蛇の化身だということが分かった。しかし、そのときすでに娘は大蛇の子を身籠っていた。池の中からは針が刺さって苦しんでいる大蛇と大蛇の母との会話が聞こえてくる。「私の命はもう短い。しかし、私の血筋が娘に宿っている今、思い残すことは何もない」「しかし、人間は霊妙なもの。三月三日の桃の花酒、五月五日の菖蒲酒、九月九日の菊の花酒を飲めば、悪しき子の邪気も祓われるであろう」この話を聞いた娘は、その大蛇の母の教えを実践して無事に男子を出産する。しかし、その子の体は大変小さく、人は彼を一寸坊と呼んだ。体の小さい一寸坊であったが大変な知恵者であったと言う。また、景行天皇が九州に下向したときには、階段を踏み外して落ちそうになった天皇を身を挺して救ったことで、褒美をもらい、菩提に四十九院を建立したと言われている。この功績が称えられ、供養塔が建てられたと伝えられている。

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この話は、「蛇聟入り」でも苧環型おだまきがた(針糸型)と呼ばれるもので、よく似た話は、古くは『古事記』の崇神天皇の項「三輪山伝説」にも見られる。娘(「おしず」とも「おつや」とも伝えられる)と小松ヶ池の大蛇との出会いは、娘が毎晩井戸の水鏡に自分の姿を映していたのを小松ヶ池から遊びにきていた大蛇が見初めたのが始まりだとか、宝積寺の夜桜見物に美男子姿となって現れた大蛇と寺の娘が恋仲となったのが始まりだとか言われている。「蛇聟入り=苧環型」には、英雄の出自を語るものも多く、一寸坊も例外ではない。日本には、体形の小さな神が異界から人間世界にやってくるという観念「ちい信仰」があり、それを投影するものとも考えられる。一寸坊の手柄話には、凧に乗って筑前の国まで飛んでいった一寸坊が降りたところは黒田家の庭先で、そのとき縁側で足を滑らせた殿様に肩を差し出して救ったことで褒美を授かったという話も残っている。

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また一寸坊の墓に関しては、黒田の殿様が参勤交代で通りがかった際「見苦しい」と、立派な墓は壊されてしまったとか、箕島沖で転覆事故が相次ぎ、その原因は一寸坊の墓にあるとして壊されたという話しも伝えられている。

出展:勝山町史

 

一寸坊の墓 

 

詳細
所在地 みやこ町勝山松田
アクセス(車) 東九州自動車道「行橋IC」より、車で約15分
アクセス(バス:田川・香春町方面行き) 行橋駅から太陽交通バスで約30分、「菩提バス停」下車、徒歩約15分